セルソーターにはセルアナライザーにはない、分取系と呼ばれる細胞分取のシステムがあります。分取系には液滴荷電ソーティング(Electrostatic Sorting)、機械式ソーティング(Mechanical Sorting)、重力ソーティング(Gravity Sorting)、磁気ビーズソーティング(Magnetic Bead Sorting)など様々な方式がありますが、ここでは最も一般的な液滴荷電ソーティングについて説明します。
バイオ・ラッドのS3e™などのセルソーターは、フローサイトメトリーによって同定した細胞を分取することができます。 液滴ベースのセルソーターではまず粒子の検出・分析を行いますが、加えて、液滴を形成する機構と、目的の粒子を回収チューブに偏向する機構も有します。 液滴を形成するため、ノズル内には最適な振幅(V)と高い周波数(cycles/second、Hz)をもった振動が、安定的に与えられます。振動の発生源としては、多くの場合は圧電性結晶(ピエゾ素子)が使われます。
液滴荷電ソーターには2つのタイプがありますが、違いは粒子にレーザーが照射されるポイント(場所)です。 Jet-in-Air方式ソーターは、粒子がノズルを出て流束(ストリーム)に入るときにレーザーが当たります。 キュベット方式ソーターでは、粒子が流束に入る前の石英キュベット内でレーザーが当たります。 粒子にレーザーが照射される場所をインテロゲーションポイント(interrogation point)と呼びますが、照射後も、粒子はさらに流束を下っていきます。 粒子がインテロゲーションポイントを通過した際に得られたデータはコンピューターに送られ、それが目的の粒子としての条件を満たすかどうかを判断します。 粒子が流束を下って進むにつれて、流束は最終的には液滴に分割(ブレイクオフ: break off)し、目的の粒子は液滴内に捉えられます。 ノズルからランダムな距離にブレークオフポイントが発生するのを防ぎ、一定の液滴サイズを維持するため、ノズル内には高い周波数で安定した振動が与えられます。
ソーティングにおいて、最も重要なパラメーターの1つは、粒子がインテロゲーションポイントを通過してから、流束が液滴に分離する位置(ブレイク・オフ・ポイント)に達するまでの正確な時間です。 この時間と距離はドロップディレイと呼ばれます。 粒子が末端につながっている液滴に到達する時点で、流束全体がノズル内の電極によって荷電されます。 目的の粒子を含む液滴へと分離すると、帯電した液滴が形成されます。 次いで、液滴は偏向板(Deflection Plate)により形成された電場を通過し、チューブまたはプレートに偏向されます。 荷電されていない粒子は廃液タンクに流れます(図6)。
セルソーティングの速度は、粒子サイズおよび液滴形成速度を含むいくつかの因子に依存します。 ノズルは、通常直径が70~130μmであり、毎秒10,000~90,000滴を生成することができます。 またソーティングの正確さは、プレイク・オフ・ポイントの安定性に依存します。
一般的なセルソーターの用途としては、同定した細胞集団やシングルセルを分取し、そのDNAやタンパク質、細胞機能を解析することなどがあります。 また、造血幹細胞におけるCD34のようなマーカーや、細胞生存率などを指標として細胞を選別し、特定の細胞集団のみを分取したり、シングルセルとした後に、さらにそれらを培養することもよく行われます。